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蟹工船

ジャンル
小説
作者
小林 多喜二

「おい地獄さ行えぐんだで!」
二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛(かたつむり)が背のびをしたように延びて、海を抱かかえ込んでいる函館の街を見ていた。

作者情報

 画像

日本のプロレタリア文学の代表的な小説家、共産主義者、社会主義者、政治運動家。
日本プロレタリア作家同盟書記長。日本共産党党員。

4歳のとき、一家で北海道の小樽に移住、小樽高等商業学校(現・小樽商科大学)に学ぶ。

小樽で銀行に勤めてから、葉山嘉樹、ゴーリキーなどの作品を通じてプロレタリア作家の自覚を持ち、小樽の労働運動にも関わり始めた。

1928年、共産党関係者大検挙(三・一五事件)の小樽を題材にした『一九二八年三月十五日』をプロレタリア文学の機関誌「戦旗」に載せ、翌年には『蟹工船』を発表して評価を得た。

また、大農場の小作人と小樽の労働者の共同闘争を描いた『不在地主』(1929年)が原因で銀行を解雇された。その後は投獄と保釈をくりかえし、1931年、非合法の共産党に正式に入党。しかし1933年、警察に逮捕・虐殺された。