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流し読む冒頭

流し読み(ながしよみ)とは集中して読むのではなく、力を抜いて軽く読むさま。読み流すさま。

老人と海

ジャンル
小説
作者
ヘミングウェイ
かれは年をとっていた。メキシコ湾流に小舟を浮べ、ひとりで魚をとって日をおくっていたが、一匹も釣れない日が八十四日もつづいた。

和泉式部日記

ジャンル
日記
作者
和泉 式部
ゆめよりもはかなき世の中をなげきわびつつあかしくらすほどに、四月十よひにもなりぬれば、木のしたくらがりもてゆく。

博士の愛した数式

ジャンル
小説
作者
小川 洋子
彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。
そして博士は息子を、ルートと呼んだ。

息子の頭のてっぺんが、ルート記号のように平らだったからだ。

それから

ジャンル
小説
作者
夏目 漱石
誰か慌ただしく門前を馳けて行く足音がした時、代助の頭の中には、大きな俎下駄が空から、ぶら下っていた。けれども、その俎下駄は、足音の遠退くに従って、すうと頭から抜け出して消えてしまった。そうして眼が覚めた。枕元を見ると、八重の椿が一輪畳の上に落ちている。

山月記

ジャンル
小説
作者
中島 敦
隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。

君の膵臓をたべたい

ジャンル
小説
作者
住野 よる
クラスメイトであった山内桜良の葬儀は、
生前の彼女にまるで似つかわしくない曇天の日にとり行われた。

チャタレー夫人の恋人

ジャンル
小説
作者
D.H.ロレンス
ぼくらの時代の真実は悲劇的なものなので、ぼくらは悲劇的な捉え方を拒絶する。大変動がおこった。あたりは瓦礫の山となった。ぼくらは新しい小さな住みかを建てはじめ、新しい小さな希望を育みはじめる。かなり困難ないとなみだ。いまは未来へつながる平らな道がない。けれども、障害物のまわりを回るか上を乗りこえてゆく。何度空が落ちてもぼくらは生きなければならない。

細雪

ジャンル
小説
作者
谷崎 潤一郎
「こいさん、頼むわ。―」鏡の中で、廊下からうしろへ這入って来た妙子を見ると、自分で襟を塗りかけていた刷毛(ハケ)を渡して、其方は見ずに、眼の前に映っている長襦袢(ジュバン)姿の、抜き衣紋(エモン)の顔を他人の顔のように見据えながら……。

駈込み訴え

ジャンル
小説
作者
太宰 治
申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。

堕落論

ジャンル
小説
作者
坂口 安吾
半年のうちに世相は変った。醜の御楯といでたつ我は。大君のへにこそ死なめかへりみはせじ。若者達は花と散ったが、同じ彼等が生き残って闇屋となる。ももとせの命ねがはじいつの日か御楯とゆかん君とちぎりて。けなげな心情で男を送った女達も半年の月日のうちに夫君の位牌にぬかずくことも事務的になるばかりであろうし、やがて新たな面影を胸に宿すのも遠い日のことではない。人間が変ったのではない。人間は元来そういうものであり、変ったのは世相の上皮だけのことだ。

女類

ジャンル
小説
作者
太宰 治
僕(二十六歳)は、女をひとり、殺した事があるんです。実にあっけなく、殺してしまいました。

浮雲

ジャンル
小説
作者
林 芙美子
なるべく、夜更けに着く汽車を選びたいと、三日間の収容所を出ると、わざと、敦賀の町で、一日ぶらぶらしてゐた。

グスコーブドリの伝記

ジャンル
小説
作者
宮沢 賢治
グスコーブドリは、イーハトーヴの大きな森のなかに生まれました。
おとうさんは、グスコーナドリという名高い木こりで、どんな大きな木でも、まるで赤ん坊を寝かしつけるようにわけなく切ってしまう人でした。

佳人

ジャンル
小説
作者
石川 淳
わたしは……ある老女のことから書きはじめるつもりでいたのだが、いざとなると老女の姿が前面に浮んで来る代りに、わたしはわたしはと、ペンの尖が堰の口ででもあるかのようにわたしという溜り水が際限もなくあふれ出そうな気がするのは一応わたしが自分のことではちきれそうになっているからだと思われもするけれど、じつは第一行から意志の押しがきかないほどおよそ意志などのない混乱におちいっている証拠かも知れないし、あるいは単に事物を正確にあらわそうとする努力をよくしえないほど懶惰(らんだ)なのだということかも知れない。

汚れつちまつた悲しみに

ジャンル
作者
中原 中也
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる

藪の中

ジャンル
小説
作者
芥川 龍之介
さようでございます。あの死骸を見つけたのは、わたしに違いございません。わたしは今朝いつもの通り、裏山の杉を伐りに参りました。すると山陰の藪の中に、あの死骸があったのでございます。あった処でございますか? それは山科の駅路からは、四五町ほど隔たって居りましょう。竹の中に痩せ杉の交った、人気のない所でございます。

罪と罰

ジャンル
小説
作者
フョードル・ドストエフスキー
七月はじめの酷暑のころのある日の夕暮れ近く、一人の青年が、小部屋を借りているS横町のある建物の門をふらりと出て、思いまようらしく、のろのろと、K橋のほうへ歩きだした。

破戒

ジャンル
小説
作者
島崎 藤村
蓮華寺は下宿を兼ねた。瀬川丑松が急に転宿(ヤドガエ)を思い立って、借りることにした部屋というのは、その蔵裏(クリ)つづきにある二階の角のところ。

ジャンル
小説
作者
司馬 遼太郎
雪が来る。

もうそこまできている。あと10日もすれば北海からの冬の雲がおおい渡って来て、この越後長岡の野も山も雪でうずめてしまうにちがいない。

伊勢物語

ジャンル
物語
作者
不明
昔、男初冠(ウヒカウブリ)して、平城の京春日の里に、しるよしして、狩にいにけり。その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。この男かいまみてけり。