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金色夜叉

ジャンル
小説
作者
尾崎 紅葉

未だ宵ながら松立てる門は一様に鎖籠めて、真直ぐに長く東より西に横はれる大道は掃きたるやうに物の影を留めず、いと寂しく往来の絶えたるに、例ならず繁き車輪の輾(キシリ)は、あるいは忙かりし、

作者情報

 画像

日本の小説家。本名、徳太郎。「縁山」「半可通人」「十千万堂」「花紅治史」などの号も持つ。

帝国大学国文科中退。

1885年(明治18年)、山田美妙らと硯友社を設立し「我楽多文庫」を発刊。
『二人比丘尼色懺悔』で認められ、『伽羅枕』『多情多恨』などを書き、幸田露伴と並称され(紅露時代)、明治期の文壇に重きをなした。

泉鏡花、田山花袋、小栗風葉、柳川春葉、徳田秋声など優れた門下生がいる。

俳人としても角田竹冷らとともに秋声会を興し、正岡子規と並んで新派と称された。

紅葉の作品は、その華麗な文章によって世に迎えられ、欧化主義に批判的な潮流から、井原西鶴を思わせる風俗描写の巧みさによって評価された。しかし一方では、北村透谷のように、「伽羅枕」に見られる古い女性観を批判する批評家もあった。
国木田独歩は、その前半期は「洋装せる元禄文学」であったと述べた。山田美妙の言文一致体が「です・ます」調であることに対抗して、「である」の文体を試みたこともあったが、それは彼の作品の中では主流にはならなかった。ただし、後年の傑作『多情多恨』では、言文一致体による内面描写が成功している。